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心はプログラムできるか 

心はプログラムできるか 人工生命で探る人類最後の謎 (サイエンス・アイ新書 31) (サイエンス・アイ新書 31)
有田 隆也
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この本はコンピュータに心を持たせて友情とか恋愛に関わらせることができるかどうかといった内容ではありません。心が行動に影響を与えることを仮に心の機能と呼ぶとした場合、心の機能は何に対してプラスに働くのか、集団にどのような作用をもたらすのかといったアプローチや単細胞生物から人間に進化していく中で行動を起こす決定要因が生み出される構造の違いから心を捉えてみるといったことが書かれている本です。

 

人工知能と人工生命の対比があります。従来の人工知能はロジカルな意味でif thenの集合として表され、入力に対して出力が人間にとって妥当であることが求められます。妥当でなくても良いならそれはいわゆる人口無能ですね。それに対して人工生命はそれ自身が持つアルゴリズムだけでは有益なものが得られないが特定の環境を与えることによってなんらかの益を得る可能性を持っているものと捉えることができます。単純なルールによって行動しているように見える蟻が任意の障害物のある環境においても餌場に対して次第に群れ全体が短い距離を通るようになるというようなことです。もともと環境の変化や違いに対応できる人工知能アルゴリズムの存在を疑っていた私には環境というキーワードで関連づけられていたため面白く感じられました。

 

なるほどと思わせてくれたのが生命における階層的な協調関係でした。遺伝子がその人の人生を決めるなどということを聞いたことがありますが、私にはどうにも嘘くさく感じじられていました。細胞は周りの細胞群という環境からのインプットによって内在する機能を通してアウトプットを行います。この構造は心臓や肝臓、肺など身体器官でも同じです。人間についても環境からのインプットによって個人のアウトプットが行われます。個体の持つ機能に環境からのインプットによってアウトプットが発生するという構造は遺伝子のレベルから国家のレベルまで同じと考えることが出来ます。この一般性はかなり強力です。

 

ソフトウェア開発に携わる人間として興味深く読ませてもらったのは、ダーウィン型、スキナー型、ポパー型、そしてこの本でプレマック型と言われる生物の行動決定モデルの違いによる分類でした。これらの型をオブジェクト指向でいうクラスとして考えるとまずダーウィン型の生物は行動決定が全くランダムです。ダーウィン型を継承し結果をフィードバックできる機能が追加され、行動決定メソッドがフィードバック結果を参照できるようにオーバーライドされたものがスキナー型と考えることが出来ます。また、ダーウィン型を継承しつつ、自分自身をインスタンスとしてメンバーに持つことによってシミュレーションを可能とし、その結果が行動決定メソッドのアウトプットに影響を与えるような生物がポパー型です。スキナー型とポパー型を多重継承し、メンバーとしてもつインスタンスを自分だけでなく他人も持てるようにしたものがプレマック型です。

 

プレマック型生物の構造を人間に当てはめてみると、例えば自分の目の前に座ってじっとこっちを向いてニヤニヤしている人が自分の家族である場合と全くの他人の場合、たいていの人は他人の時の方が不安を感じる度合いが高くなります。これは自分の中で行われるシミュレーションがよりダーウィン型に近いからと考えることが出来ます。コンピュータでコミュニケーションにおける不安をベースにしたシミュレーションモデルを考える際に考慮に値する考え方だと思います。

 

生物の身体的特性をそのままシミュレートするのではなく、意味のレベルへ抽象化することによって他への応用が可能になるという形のアプローチはNP完全問題はもちろん、現在未解明な問題に対してよりよい結果を得るための手段として有効なのではないでしょうか。

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